Japan Through Time

福岡県 · 1901年 · 近代 · 明治時代

The Yawata Steel Works: The Beginning of Modern Steelmaking in Japan

八幡製鐵所―近代日本の製鉄のはじまり

1901年、北九州の八幡にできた官営製鐵所で最初の高炉に火が入れられた。ドイツの技術で建てられ、日本人技術者が操業を安定させた製鐵所は、およそ10年で事業として成功した。

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太い灰色の配管と円すい形の集じん機を備えた鉄骨の高炉の塔。そばに1階が吹き抜けの細長い建物と古い電気機関車があり、青空の下、通路から見上げている
北九州市の東田第一高炉跡(2017年3月撮影)。今立っている高炉は1962〜1972年に操業した改修後のもので、1901年の高炉そのものではない。そらみみ, 2017-03-03 · Wikimedia Commons · Creative Commons Attribution-ShareAlike 4.0 International · 出典 · 縮小して掲載

1901年2月5日、九州の北の海辺にある八幡村(今の北九州市)で、新しい官営製鐵所の東田第一高炉に火が入れられた。製鐵所はドイツの設計と設備で建てられたが、はじめの数年は苦難が続いた。

日本人の技術者たちが問題を乗り越え、官営八幡製鐵所は操業開始からおよそ10年で事業として成功した。今では、創業期の建物など4つが世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産になっている。この記事では、計画から今に残る建物までをたどる。

なぜ自前の鉄が必要だったのか

北九州市によれば、明治維新のあと、「富国強兵、殖産興業」のかけ声のもとで、鉄鋼業を早く確立することが望まれていた。福岡県は、明治の中ごろには繊維産業などの発展とともに、船や鉄道の材料となる鉄の需要が高まったが、そのほとんどを輸入に頼っていたと説明している。

それ以前の試みは、うまくいかなかった。明治の初め、政府は洋式の高炉を備えた最初の官営製鉄所を岩手県の釜石に建てたが、福岡県によれば、満足な成果を出せず、3年で操業を終えた。

福岡県が「日本の冶金学の父」と紹介する野呂景義(のろかげよし)には、「鉄は工業の母、護国の基礎なり」という言葉が伝わる。世界遺産協議会も、鉄鋼は軍事にも国内の産業にも欠かせないものだったとしている。

海辺の村での国家事業

北九州市は、日清戦争(1894〜1895年)をきっかけに、近代的な洋式製鉄所をつくる機運が高まったとしている。世界遺産協議会によれば、鉄鋼の需要がふくらむなか、伊藤博文が総理大臣のときに「製鐵所設置建議案」が賛成多数で可決された。

場所に選ばれたのは、筑豊炭田に近く、洞海湾に面した八幡村だった。福岡県は、日本で最も多くの石炭を産出した筑豊炭田に隣り合っていたことと、地元の熱心な誘致活動が実を結んだことを理由に挙げている。

1897年(明治30年)6月、八幡村に官営製鐵所が開庁した。製鐵所の設計と施工はドイツのグーテホフヌンクスヒュッテ社(GHH社)に発注され、技術者はドイツや釜石の田中製鐵所から迎えられた。

本事務所は、操業開始の2年前、生産設備に先がけて1899年に完成した。中央にドームを持つ左右対称の赤煉瓦2階建てで、屋根は日本瓦葺きという、日本と西洋の様式を合わせた建物である。中には長官室や技監室、外国人顧問技師室などが置かれた。

高炉の火入れと、はじめの苦難

1901年(明治34年)2月5日、東田第一高炉に火が入れられ、同じ年の11月18日に作業開始式が行われた。

操業は、はじめから順調だったわけではない。世界遺産協議会によれば、相次ぐトラブルで高炉は休止したが、野呂景義ら日本人技術者がこの挫折を乗り越え、操業を安定させた。

福岡県は、日本の風土に合うように高炉を改め、操業方法を改善したと説明している。協議会の英語のページは、日本人技術者が設計を改め、1904年に操業が軌道に乗ったとしている。

10年での成功

福岡県によれば、官営八幡製鐵所は操業開始から10年で事業として成功し、その後3度にわたる拡張計画で鋼材の生産を増やした。県の広報誌によれば、創業から10年で、国内で生産される鋼材の90パーセント以上を担うまでになった。

世界遺産協議会は、八幡製鐵所をアジアで初めて成功した本格的な銑鋼一貫製鉄所とし、日本経済の礎を築いたとしている。

製鐵所を支えた建物は、技術が移っていく様子を伝えている。修繕工場は、1900年にGHH社の設計と鋼材で建てられ、機械の修理や部品の製作・加工に使われた。

協議会は、現存する国内最古の鉄骨建造物としている。鋼材の生産が増えるにつれて3回増築され、今も使われており、創業時に据え付けられた天井クレーンも保守作業に使われ続けている。

協議会によれば、修繕工場の最初の区画の鋼材にはGHH社の刻印があり、のちに増築された区画には、製鐵所自身がつくった「ヤワタ」の刻印のある鋼材が使われている。協議会は、これをドイツから日本への急速な技術移転の証しとみている。

旧鍛冶工場も、1900年にGHH社の設計と鋼材で建てられ、大型のスパナやハンマーなど、製鐵所の建設に必要な鍛造品をつくった。1909年にほぼ2倍に増築され、1917年に今の場所へ移されて製品試験所となった。今は史料室として使われている。

拡張には水も必要だった。第一期拡張工事で足りなくなった工業用水を補うため、遠賀川の河口から約10キロメートルの場所、今の中間市に遠賀川水源地ポンプ室がつくられた。

福岡県は建設を1909年とし、内閣官房は1910年に操業を始めたとしている。動力は蒸気から電気に変わったが、今も稼働している。

世界遺産

2015年7月、ユネスコの世界遺産委員会は「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の世界遺産一覧表への記載を決めた。8県11市にある23の構成資産からなる。内閣官房によれば、この遺産群は、1850年代から1910年までの半世紀に、西洋から非西洋の国への産業化の移転が成功したことを証言している。

八幡の構成資産は、北九州市にある官営八幡製鐵所の旧本事務所・修繕工場・旧鍛冶工場と、中間市の遠賀川水源地ポンプ室である。これらは、明治後期(1910年まで)の重工業の重要な拠点に位置付けられている。

登録の際、日本政府は世界遺産委員会で、「1940年代にいくつかのサイトにおいて,その意思に反して連れて来られ,厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと,また,第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたこと」について理解できるような措置を講じると発言した。発言は、8県にある23の構成資産から成るこの世界遺産の全体についてのもので、どのサイトかは挙げていない。

外務省は、この発言は違法な「強制労働」があったと認めるものではないと注記している。2022年の日本政府の報告書は、徴用された朝鮮半島出身の労働者がいたのは一部のサイトだけだったとしている。

訪れられる場所

4つの構成資産は日本製鉄九州製鉄所の構内にあり、今も使われていることなどから一般公開されていない。2015年4月17日には、旧本事務所を外から眺められる「眺望スペース」が開かれた。福岡県によれば、解説パネルや古写真が展示され、ボランティアガイドが常駐している。

八幡東区の東田第一高炉跡は、北九州市の指定史跡である。今立っている高炉は1901年の最初のものではなく、第10次改修の高炉で、北九州市によれば日本で最初の高圧高炉として建てられ、1962年8月から1972年1月まで操業した。この高炉跡は世界遺産の構成資産ではない。

2026年10月に確かめた時点では、北九州市のページに、施設の一部に危険な箇所があるため当面の間、広場への立ち入りを禁止していると書かれていた。訪れる前に、北九州市の公式サイトで最新の状況と開館時間を確認してほしい。

出典

  1. 【市指定】東田第一高炉跡Kitakyushu City
  2. 官営八幡製鐵所Japan's Meiji Industrial Revolution World Heritage Council
  3. The Imperial Steel Works, Japan|YAWATA|STORY & SITES|Sites of Japan's Meiji Industrial RevolutionWorld Heritage Council for the Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution
  4. 八幡|ストーリー&サイト|明治日本の産業革命遺産World Heritage Council for the Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution
  5. 遠賀川水源地ポンプ室|八幡|ストーリー&サイト|明治日本の産業革命遺産World Heritage Council for the Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution
  6. 世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」とはFukuoka Prefecture
  7. 【小特集】官営八幡製鐵所(せいてつしょ)120年|グラフふくおか 2021 WINTERFukuoka Prefecture (Public Relations Division 県民情報広報課, グラフふくおか)
  8. 「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の概要Cabinet Secretariat (Office for World Heritage of Industrial Heritage)
  9. 官営八幡製鐵所 旧本事務所眺望スペースFukuoka Prefecture Tourism Association (クロスロードふくおか)
  10. 「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業」のユネスコ世界遺産一覧表への記載決定(第39回世界遺産委員会における7月5日日本代表団発言について)Ministry of Foreign Affairs of Japan
  11. State of Conservation Report: Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution: Iron and Steel, Shipbuilding, and Coal Mining (Japan) (ID: 1484)Cabinet Secretariat, Government of Japan
  12. OUV:世界遺産としての価値(明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業)World Heritage Council for the Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution